エイズがうつるしくみ
エイズウイルスを人から人へ伝えるのは…
エイズウイルスが水、食べ物、あるいは空気を介して伝播することはない。
エイズの感染経路で最も知られているのは感染者との避妊具なしの性交で、これは世界のエイズ感染の約75%を占める。
他にも、感染者に使用した注射針等の医療器具を非感染者にも適用することでも感染する。
また、エイズに感染した女性の妊娠及び出産過程、授乳によって母親から子へ感染する可能性もある。
上記の全ての場合に共通するのは、エイズ感染者の体液が未感染者の体内に侵入する可能性があるという点である。事実、エイズ陽性の血液や精液等比較的濃度の高い体液が感染源とされることが多く、唾液や汗など濃度の低い体液はエイズ感染者のものでも感染を広めるリスクは少ないものとされる。
したがって、エイズ感染者と口付けをしてもエイズウイルスがパートナーに伝わる可能性は極めて低い。
エイズ伝播のメカニズム
上記のように、避妊器具なしの性交や医療器具の不適切な使用、またエイズ陽性の母親から子へのウイルスの伝播が主なエイズ拡散の要因として知られている。
他にも、エイズ感染者の血液が輸血に使われた場合や、医療機関でエイズ感染者の体液が付着したものが医療ごみとして不適切に処理された場合、またタトゥーやピアスの処置をする過程でエイズ感染者の血液が露出した場合もエイズ感染拡大の可能性が生まれる。
グローバル社会が人類を冒す
エイズウイルスのヒトへの感染は西アフリカから拡大した。学者によると、免疫不全ウイルスに感染したチンパンジーを食肉目的で狩猟したことがそもそもの始まりだという。
事実、1959年にエイズウイルス1型(HIV-1)のヒトへの感染の第一例がコンゴ民主共和国の男性で確認された。次いでアメリカでもエイズウイルスが発見され、以来世界的に拡散し人々に恐怖を与えている。
このエイズウイルスの起源を考えても想像ができる通り、エイズ感染拡大が最も懸念される地域はアフリカである。事実、全エイズ感染例の約70%はサハラ砂漠以南のアフリカで報告されたものである。
また、エイズに関連する病が原因で命を落とす例が最も多く報告されているのも同地域で、2011年世界で報告されたエイズ関連の死者数が170万人なのに対して、サハラ砂漠以南のアフリカで報告された死者数は約120万人である。
このエイズの拡大の背後にあるのは、近年その発達が著しいグローバル社会である。
世界を先進国と発展途上国に分割し、後者に経済的なプレッシャーを与え続ける反面、貧しい国々からより経済的に豊かな国々への移民の流入を生み出したこの現象が、アフリカ起源の病原体を世界各地へ広めた一因であることは間違いない。
エイズ撲滅へ向けた新薬の開発に伴って、地域間の貧富の格差を埋める手立てを考えなければならない。